東京高等裁判所 昭和40年(う)1302号 判決 1965年9月29日
主文
本件各控訴を棄却する。
理由
<前略>そして、公職選挙法第二二一条第一項にいわゆる選挙運動者とは、選挙運動に著手した者であることを要せず、いやしくも選挙運動の請託を受け、これを承諾した者は、その後現実に選挙運動に従事したかどうかを問わず、選挙運動者であり(昭和四年(れ)第五〇九号同年六月二一日大審院第四刑事部判決の趣旨、刑集八巻三七八頁、東京高裁昭和二五年(う)第五〇八号同二六年一一月六日第六刑事部判決、高裁刑判決特報二五号二六頁参照)、もちろん、選挙権を有するかどうかは問わないものであるところ(昭和一一年(れ)第三二八二号同一二年三月二五日大審院第二刑事部判決、刑集一六巻三九七頁参照)、本件において、被告人高橋、同戸高の両名は、岡田秀一とともに、候補者被告人吉田孝一のため投票取りまとめなどの選挙運動の依頼を受け、その報酬としてなされることの情を知りながら、一人当り約一、三〇〇円相当の酒食の饗応接待を受けた旨の事実を認定判示している以上、右判例の趣旨にてらし、所論被告人高橋らが、右饗応接待を受けた後、所論のように選挙運動をしなかつたとしても、選挙運動者と認めるのに、なんら妨げはない。<後略>(小林健治 遠藤吉彦 吉川由己夫)